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親子熊と遭遇

2018年2月26日

 

発生日2016年10月21日
体験者名2017年Y127
登山地域雲取山

 

 

登山概要

■パーティ人数:1人
■山行スタイル:個人山行
■宿泊:日帰り
■登山内容:山頂往復
■天気:曇時々晴

 

ヒヤリハットタイプ

■解決種別:自力下山
■登山計画時にそのリスクに対する検討を行ったか:少しした
■行動中にリスク回避や軽減が行えたか:しなかった

 

ヒヤリハット本文

   持病があるので、ゆっくりと歩いた。後ろの登山者に登山道を譲ると次々と抜かれていた。いつの間にか前後には登山者の姿は見えなかった。鴨沢コースの堂所を過ぎると、登山道はやや急登になる。足元ばかりみて、必死に歩いていた。私は、右足膝を痛めている。しかも気管支喘息持ちなので、肺活量が少なくなっている。若い時の半分の2.000ccしかない。息を整えるために、何回も止まっては、登山道の先を見た。堂所と七ッ石小屋下南分岐の中間あたりは、登山道が直角に右に曲がって尾根の左側から右側へトラバースする。ここは、富士山のビュー・ポイントだ。早く富士山を撮影したいな。  午前7時20分、ビュー・ポイントまでの距離は約30m。おや黒い犬がいるようだ。中型犬が右へ左へと動いている。最近の登山者は、平気で飼い犬を連れて来るから困ったものだと思った。しかし、登山者の姿が見えない。目を凝らしてみると犬ではなく子熊だ。そばには、大きな熊がいた。母熊は、ずうっとこちらを見ている。  慌ててザックを降ろし、熊鈴を取り出して強く鳴らす。おや、逃げないぞ。まだ私の方を見ているぞ。そうか、熊鈴に慣れているのか。今度は、ホイッスルを「ビー、ビー、ビー、ビー」と思いっきり吹く。  子連れの母熊は、神経質になっているので、攻撃されるかもしれない。ストックを最長に伸ばすために目線を手元に移す。足がぶるぶると震えているのが分かる。背中を見せて逃げてはいけない。熊は、動く物を追うからだ。熊の方へ目線を向けたまま、ゆっくり後ろへ下がるといいと聞いたが、どうしても動けない。  至近距離だからやられると思って、ゆっくりと顔を上げた。そこには、親子熊の姿はなかった。しばらく呆然としたが、助かったと安堵した。登山道には栗やどんぐりがたくさん落ちていた。そうか、左の谷から登山道へ上がって来て、食べに来たのか。 ともかくほっとした。

 

要因分析

 

装備や外的要因の分析(3×3要因分析表)

 計画時出発直前行動中
装備いつもは、必ず熊鈴を付けるのであるが、今日は登山者が多いので大丈夫だろうと思い、ザックのポケットにしまって、6時頃出発した。
コース
山の状況奥多摩ビジターセンターのホームページにより熊の生息地であることは知っていた。しかも秋は連日のように目撃情報が寄せられていた。雲取山も出没が多い山域の一つである。熊鈴とホイッスルを持参しよう。

 

登山者自身の内的要因分析(技術、知識、体力、経験等)3×5登山者分析表

 計画時出発直前行動中
楽観的・希望的な解釈
調査・観測結果に基づくリスク対策行動
安全最重視の行動
リスク低減行動の継続的実践
その他当日は、平日にもかかわらず登山者が多く、小袖乗越にある丹波山村村営駐車場も午前5時45分頃には半分位車が止まっていた。その後も次々と車が到着しては、登山者と出発していた熊のことは失念していた。持病のため、果たして雲取山までたどりつけるだろうか。

 

対策

○熊鈴は登山者の多い、少ないにかかわらず必ずつけて鳴らしてあるく。時々ホイッスルを吹く。 ○奥多摩ビジターセンターのホームページ等により熊の出没日と場所を調べる。 ○足元だけでなく、絶えず登山道の前方をよく見る。