発生日 | 2012年03月31日 |
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体験者名 | 2016年Y68 |
登山地域 | 八ガ岳・赤岳 |
■パーティ人数:1
■山行スタイル:個人山行
■宿泊:テント泊
■登山内容:山頂往復
■天気:曇りから吹雪
■解決種別:自力下山
■場所 :下り
■原因(環境):視界不良(吹雪・ガス)
■原因(人):
■道に迷ったかもと感じたときにすぐに対応したか:No
■迷ったときに現在位置を把握できたか:No
■現在位置や正しいルートを確認する手段:勘
■道迷い後の行動:停滞
曇天で停滞を決めていたが、偵察に出てそのまま満足な装備も持たずに地蔵尾根を登ってしまい、頂上から下降時に文三郎尾根の核心部を過ぎた辺りからの吹雪、ガスで道迷い。ザックも小型デイパック、ツェルト、ダウン等をテントに置いたままのビバークとなった。視界不良のためだだっ広くなった辺りからルートがわからず、表層雪崩を誘発してばかりなので樹林帯方向へ迷い込む。写真を撮るためグローブを外したら湿雪でぬれたためかグローブに手が入らなくなってしまう。両岸を氷で覆われた沢に出くわすが、沢に迷い込んだら遭難すると思い、登り返すがルート発見できず。仕方なく明るいうちに雪洞を掘り、夜に備える。指先を脇に挟んだり、叩いたりするが指先が白蝋色になり、やがて何も感じなくなった。レスキューシートだけでは雪面からの冷えが防げず、寒さに震える。数時間で低気圧は通過して行ったが、今度は放射冷却で明け方の3時から5時辺りの寒さは耐えがたく、雪洞を出て歩き回った。太陽がようやく上ってきたとき、やっと生き延びられたという感動があった。
計画時 | 出発直前 | 行動中 | |
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装備 | 偵察でも大型バックパックで行くべきだった。パッドがあれば断熱効果があるのに、雪面の冷たさは想像以上 | ツェルト・ダウン等をテントに残したのは痛恨のミス | オーバーミトンがやはり無く、風に痛めつけられた。グローブのインナーが湿雪で指が入らなくなるとは思いもよらなかった。 |
コース | 積雪期ばかり登ってきたので慣れがあった | 慣れからくる油断 | |
山の状況 | 低気圧通過はしっかり把握していた。行動すべきでないと頭では十分理解していた。 | 未だ大丈夫という天候判断の甘さ |
計画時 | 出発直前 | 行動中 | |
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楽観的・希望的な解釈 | |||
調査・観測結果に基づくリスク対策行動 | |||
安全最重視の行動 | |||
リスク低減行動の継続的実践 | |||
その他 | 油断、思い上がり、慣れからくる甘さ | 新年度1日の会議を絶対に外せないという焦りがあった | 地蔵尾根を30分程登った段階で引き返せばよかったのだが、ブルーアイスになっていてピッケルだけでは下りるのに不安があった。文三郎尾根なら簡単だろうと判断した。 |
常に謙虚な心で山に接するということ。初心者の時の慎重さを失わないこと。ビバーク翌朝ガイドの方に偶然出会い、リードしてもらって鉱泉までたどりついた。取り敢えず緊急の凍傷への処置をしてもらい、そのまま入院したが、指は回復せず、両手の指のほとんどを切断。入院は4か月に及び、退院後も地元で人工関節手術等で再び入院。多くの方々に多大な迷惑をかけてしまった。申し訳ないことである。 現在、身体障碍3級2種。リハビリで多くのことをこなせるようになり、装備を大幅に入れ替えたうえで再び山に復帰できた。この上ない喜びである。