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赤岳、文三郎尾根からの道迷い

2017年2月24日

 

発生日2012年03月31日
体験者名2016年Y68
登山地域八ガ岳・赤岳 

 

 

登山概要

■パーティ人数:1
■山行スタイル:個人山行
■宿泊:テント泊
■登山内容:山頂往復
■天気:曇りから吹雪

 

ヒヤリハットタイプ

■解決種別:自力下山
■場所 :下り
■原因(環境):視界不良(吹雪・ガス)
■原因(人):
■道に迷ったかもと感じたときにすぐに対応したか:No
■迷ったときに現在位置を把握できたか:No
■現在位置や正しいルートを確認する手段:勘
■道迷い後の行動:停滞

 

ヒヤリハット本文

曇天で停滞を決めていたが、偵察に出てそのまま満足な装備も持たずに地蔵尾根を登ってしまい、頂上から下降時に文三郎尾根の核心部を過ぎた辺りからの吹雪、ガスで道迷い。ザックも小型デイパック、ツェルト、ダウン等をテントに置いたままのビバークとなった。視界不良のためだだっ広くなった辺りからルートがわからず、表層雪崩を誘発してばかりなので樹林帯方向へ迷い込む。写真を撮るためグローブを外したら湿雪でぬれたためかグローブに手が入らなくなってしまう。両岸を氷で覆われた沢に出くわすが、沢に迷い込んだら遭難すると思い、登り返すがルート発見できず。仕方なく明るいうちに雪洞を掘り、夜に備える。指先を脇に挟んだり、叩いたりするが指先が白蝋色になり、やがて何も感じなくなった。レスキューシートだけでは雪面からの冷えが防げず、寒さに震える。数時間で低気圧は通過して行ったが、今度は放射冷却で明け方の3時から5時辺りの寒さは耐えがたく、雪洞を出て歩き回った。太陽がようやく上ってきたとき、やっと生き延びられたという感動があった。

 

要因分析

 

装備や外的要因の分析(3×3要因分析表)

 計画時出発直前行動中
装備偵察でも大型バックパックで行くべきだった。パッドがあれば断熱効果があるのに、雪面の冷たさは想像以上ツェルト・ダウン等をテントに残したのは痛恨のミスオーバーミトンがやはり無く、風に痛めつけられた。グローブのインナーが湿雪で指が入らなくなるとは思いもよらなかった。
コース積雪期ばかり登ってきたので慣れがあった慣れからくる油断
山の状況低気圧通過はしっかり把握していた。行動すべきでないと頭では十分理解していた。未だ大丈夫という天候判断の甘さ

 

登山者自身の内的要因分析(技術、知識、体力、経験等)3×5登山者分析表

 計画時出発直前行動中
楽観的・希望的な解釈
調査・観測結果に基づくリスク対策行動
安全最重視の行動
リスク低減行動の継続的実践
その他油断、思い上がり、慣れからくる甘さ新年度1日の会議を絶対に外せないという焦りがあった地蔵尾根を30分程登った段階で引き返せばよかったのだが、ブルーアイスになっていてピッケルだけでは下りるのに不安があった。文三郎尾根なら簡単だろうと判断した。

 

対策

常に謙虚な心で山に接するということ。初心者の時の慎重さを失わないこと。ビバーク翌朝ガイドの方に偶然出会い、リードしてもらって鉱泉までたどりついた。取り敢えず緊急の凍傷への処置をしてもらい、そのまま入院したが、指は回復せず、両手の指のほとんどを切断。入院は4か月に及び、退院後も地元で人工関節手術等で再び入院。多くの方々に多大な迷惑をかけてしまった。申し訳ないことである。 現在、身体障碍3級2種。リハビリで多くのことをこなせるようになり、装備を大幅に入れ替えたうえで再び山に復帰できた。この上ない喜びである。