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ヒヤリハットで疑似体験
発生日 | |
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体験者名 | 2024Kinny |
登山地域 | 九州・祖母傾 マルチピッチ白亜スラブ |
登山概要
全5ピッチのマルチ
午前中の2〜3時間でサクっと終わる予定
アプローチ5分
1P 35m
2P 5.10b 25m
3P 5.10a 45m
4P 5.11b 35m
5P 25m
下山:徒歩
ヒヤリハットタイプ:1)カム配置が悪くがロープが岩角に当たりスタックし、ロープアップできなかった
2)4Pと5Pをつないで登ったため、ロープ長が足りなくなった
3)セカンドのコールがトップに聞こえなかった
4)正常なアンカー構築できず、1点にぶら下がることになった
5)その1点の強度が不足するボルトだった
6)カラビナが足りなくなった
7)そもそも、敗退になった場合に降りることができないロープ構成だった
ロープアップされない、ロープが足りない、事態を考慮して、もっと思慮深く行動すべきだった。
ヒヤリハットタイプ
ヒヤリハット本文
「11のクラックがあるから難しいだけど、白亜スラブのフォローをやってくれないかな」と先輩が持ちかけてきてくれたのは、小川山のアルバイトから帰った9月。
しかし、白亜スラブ私の技量をはるかに超えている。・・・ので返事は保留した。
初日は、台風一過の日之影へワイドクラックがあるボルダーを探しに行った。日之影は、とても美しく、楽しそうな場所で、何日も長居したい感じだった。ところが、台風で大増水中で、ボルダーは見つからなかった。ただとても美しい渓谷で、その美しさに満たされた。二人とも、別にボルダーが見つからずとも満足な感じだった。翌日は、マスターズルーフへ出かけた。
最終日の帰宅日で、帰り間際にサクッと登ろう!と提案されたのが白亜スラブ。これは、私はクラックがやりたかったのと、最初の1P目と5P目はグレードが低かったので、私でもリードが取れるのではないかと思ったのだった。「行ってもいいですよ」。行って”も”、というところが、多少の譲歩感を出しているのだが、これは、自分のルートではないという意味だ。
先輩は、「じゃロープは一本で!敗退なしで!」という。振り返れば、この時に、よく事態を理解すればよかったのだが…。
最近とても強くなっている人で、上り調子だ、自信がある、ということに聞こえた。むしろ、問題は私がフォローで11のクラックを登れるかどうか?だと思えた。大体、登れなくなって、フォローもできないとなるのが核心のように思われた。
それで、一応ユマールを保険に持っていくこととし、目的は、5.11のクラック!という認識だった。2、3時間でサクッと登って早めに帰ろうね!ってことだ。宮崎は遠い。
5.11のクラックは、当然だが、まだ登れたことがなく、私にとっては難しすぎるチャレンジというのは明らかだったので、先輩は無理についてきて、とは言わない。でも、行きたいんだろうなぁというのは、感じられた。
いつも世話になっている先輩のことだし、ここはいっちょユマールを保険に頑張るか!と思ったのだった。
■ 当日
翌日も快晴でいい日だった。白亜スラブはとっつきも、簡単で、ほぼゼロ分だ。トンネルの上。それで、ルンルン気分で出かける。さっさと片づけよう〜みたいな感じだ。
身軽に装備する。ロープ、最小限のギア、下山用の靴。水。まぁ5ピッチしかないしね!みたいな感じ。ランチは下山後でいいよね!ってことだ。セカンドがザックを背負ってリードする人は空荷だ。ずっと、これが標準スタイル。
ところが、最初の1ピッチ目を一目見て、私のリードはないと、先輩も私も瞬時に理解。
…というのは、確かに登攀は易しく段々なのだけど、斜め右に上がっていて、ピンは10mは先であり、地面は8m下であり、まったくピンの意味をなしていない配置だった。ゼロピン目を取りましょう〜と言っても、そのゼロピン目は、ビレイヤーを守るだけで、クライマーには全く関係なし。たしかに人間は8mから落ちても死なないとは思うけど。
別の人だが、ずっと以前に雪の北岳で、下部岸壁のトラバースでフォローしていたら、全く中間支点がなかった。先行している先輩に「これ〜、何のビレイにもなっていないよー!」と叫んだら、先輩から「すいませーん!!!」と返事があった…のを思い出した。あれは、先輩もアップアップで、中間支点が取りたくても取れないのだった。リードクライマーの先輩も危険だったし、フォローの私もノービレイと同じだった。ロープ、タダの邪魔。むしろあったほうが墜落した時、2名になってしまう。
しかし、これは違う。明らかにランニング(ボルト)を入れる手間を省いていて、ただ怠惰なだけなのだった。
私の目には、ただのバカっぽいピッチにしか見えなかった。
何も言わず、当然のように先輩のリード。まぁ、このルートは彼が来たかったルートなんだしね。
2ピッチ目は直上で素直なピッチで少しホッとする。しかし、ロープが上がらないので困った。しばらく待ったが、フリーは断念し、ユマールで上がった。今回は、いつも持っているロープクランプを持ってこなかったので、フリーで登れない。もし自己確保して登るとなると、自己確保に使える器具がユマールしかない。
上がったら、ロープが上がらなかったわけが分かった。カンテの屈曲でロープがスタックしている。カムの回収も、セカンドでも工夫が必要だった。少し振り子で振って回収。
■ ひん曲がったRCCボルト
その後が問題だ。3P目は、ルート名の由来になった、きれいな白いスラブ。
だが、先輩がなかなか離陸できない。
私の見た目には5.10だし、普段ゲレンデのショート、フリーで登っている感じだと、そんなに考えるものでもなさそうに思った。ピンが右にも左にも見えた。どちらが敗退用なのだろうか?
連打されたRCCのボルトが困難を物語る。だけでなく、その支点がひん曲がっていた。
普段はもっと難しいグレードをゆとり付きで登っている先輩が、オブザベに長い時間をかけていた。
アルパインでは落ちれない。というか、落ちたら死ぬと思う。ここは3ピッチ目だが、スラブなので、落ちれば、大根おろしを免れない。しかも、敗退できないロープ配分だ。
オブザベ時間が長い。
どうしようか…。私は、敗退を考え始めていた。しかし、50mのロープ1本で来てしまったため、1P目が降りれない。2P目はギリちょんだが、まぁいい。スリングは120が一本、60が…と考えていた。最悪は継ぎ足しで降りるか。1P目が右上していたので、懸垂で降りると1P目の距離は正確ではないかもしれない?降りてみて、ダメだったら、フィックスにして回収に来るか?
考えている間に、先輩がスタート。スラブはだいぶ時間がかかった。
これは、セカンドは急いで登らねば…。セカンドで上がると、ランニングのヌンチャクにカムのビナが使ってあった…クイックドローが足りなくなってしまったのだった。ここナチュプロが取れるという話で、カムで支点を取りたいと、持って上がったので、その分、ノーマルのスリングやカラビナを節約したのだろう。
次は懸案の4P目。5.11のクラック。ここは比較的スムーズだった。しかし、ロープ一杯なんですけど!! ロープが足りなくなり、少し上がって、さらにロープを出す。
「ロープ一杯!」
と叫ぶが、リードクライマーには声が届かないようだ。しかし、このように少し登ってロープを出す、をいつまでも続けるわけには…。これだとコンテになってしまう。
ちゃんとランニングが取れているか、こちらからは見えないし、中途半端なところでロープが足りなくなれば登れないだけでなく、落ちるしかなくなる…。と思い、ロープを出すのを辞めた。ビレイヤーが少し上がるというのは、ほんのちょっと足りないときには、有効なんだが、ずっとは…。
コールを待つ。待つこと5分。ロープも動かない。もうちょっと待つ。動かない。動かないよね???と自問自答しつつ…ユマールを掛けた。コールが届かないのでは、アップもされない、と思ったからだ。ロープに全体重をかけて、ユマーリングで登った。最初の一歩に勇気が必要だった。まぁ、フリーで登れなかったことについては、もともと5.11は難しすぎると思っていたから、惜しいことは無い。
ユマーリングは宙づり登り返しと同じ方式で、足と腰に振り分けて、尺取虫のように上がった。途中カムの回収があるので、ユマーリングとはいえ、結構テクが必要だ。本来は、架け替えつつ回収するように教わったが、めんどくさく、まぁ、いいかと、フリー交じりに回収。途中から傾斜が緩んだからだが、足の側を抜くと、ロープテンションが無くなり、やり辛いのだった。やはり、ランニングが足りなくなったらしく、中間支点にカムのビナが使ってあった。
到着すると、相方は、テラスの一歩下、ほんの1ピン、終了点に足りないところにいた。立派なペツルに、二人でぶら下がっていた。
このボルトは、ペツルではなく、ペツルもどきのカットアンカーで強度不足の40年もののボルトだった。後で分かった。
あと少しだったんだなーと見て思ったが、相方はバツが悪そうにしていた。支点は2個というのがクライマーの常識だからだが、この状況では、だれが見ても、それがベストであった…。
どうも4P目の終了点を見落として5P目とつないでしまったらしかった。少し3P目でオブザベに時間がかかったというのも、心理的に押された理由にあったかもしれない。
しかし、天気は良く、景色は素晴らしく、二人とも、少々の敗北感は忘れてしまいそうな大絶景だった。
最後は、終了点のあたりの座れるテラスまで2,3m上がるだけ。
要因分析
装備 | 50mシングルロープ。セカンドはユマールを用意した。カム、ヌンチャク。 |
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コース | マルチピッチ |
山の状況 | 快晴 |
装備 | |
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コース | |
山の状況 |
装備 | |
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コース | |
山の状況 |
楽観的・希望的な解釈 | トップ 5.12RP 5.11ノーマルのクライマー 計画に傲慢さがあった。 セカンド 5.10代ノーマルのクライマー トップに計画を任せ、チェックを怠った サクっと登ろう、と楽観。ロープの相談をいい加減にしかしなかった。 支点について無知だった。 |
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調査・観測結果に基づくリスク対策行動 | リスク行動がなかった |
安全最重視の行動 | 安全重視の行動がなかった |
リスク低減行動の継続的実践 | なかった |
その他 |
楽観的・希望的な解釈 | トップ → 山を甘く見ていた セカンド → トップが考えることだと考えていた サクっと登って帰ろう! |
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調査・観測結果に基づくリスク対策行動 | なかった |
安全最重視の行動 | トップは、カムのビナを使ってヌンチャク代わりにした。 セカンドは、ロープアップされないので、自己確保で登った。 |
リスク低減行動の継続的実践 | なかった |
その他 |
楽観的・希望的な解釈 | トップ→予想より大変で焦っていた セカンド→通常と違う各ピッチで、特別な技術を用いる必要があった ヌンチャクが足りないが、カムのカラビナでもまぁいいか カムの配置が悪くロープがスタックしたが、まぁいいか ロープアップされていないことにトップは気が付けない セカンドは、しかたないなと妥協して、ユマール |
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調査・観測結果に基づくリスク対策行動 | なかった |
安全最重視の行動 | なかった |
リスク低減行動の継続的実践 | なかった |
その他 |
対策
ロープアップされない場合について想定してから行く。
各ピッチをつないでしまったら、60mロープでも不足する。バックアップのロープはかならず持っていく。
プロテクションの数は、経験者に確認したり、相談してから行く。
ルートに行く前にボルトの経年数についてローカルクライマーに聞く。
ボルトの強度について、日ごろから勉強し、グージョンとカットアンカーが見分けられるようになっておく。
学びの場
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